10月の11日に神戸の松方ホールに、ショパンが好んで演奏したと言われるプレイエル社製のフォルテピアノを使用した演奏会に行ってきました。
このピアノは1846年製とのことです。ショパンは1810年生まれで、1849年に亡くなっているので、ほぼショパンが使用していたのと同じような響きが期待できる楽器ということになります。
確かショパンが『普段はエラールのピアノを弾くが、気分の良いときはプレイエルのピアノを弾く』というようなことを言っていた、という風なことを読んだ記憶があります。
遠山一行氏の『いまの音、むかしの音』という評論集の中に、『ピアノの音』という小文があり、ショパンとプレイエルに関する記述があります。引用すると、
『十九世紀のはじめフランスのピアノが世界をリードしていた頃、ショパンはプレイエルを自分の楽器としてえらび、エラールを派手だといってしりぞけた。しかし、リストはそのエラールを弾いてピアノの王者になった。
エラールの音は華やかで多彩だが、プレイエルは幾分地味で、しかも繊細である。それをショパンの音といって差支えないだろう』
プレイエルが、まさしくショパンが求めていたピアノの音ということのようです。
そのピアノを使用して今回演奏するのが、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの1位だった、トマシュ・リッテルと、2位だった川口成彦の二人でした。
前半は川口成彦の演奏で、後半はトマシュ・リッテルの演奏でした。
二人の演奏、見事でしたが、驚いたのは、二人で同じピアノを、同じ調律で弾いてるのに、響き方が全然違っていたことです。
よく、ピアニストのタッチで音が全然変わるということをいう人がいますが、これにたいしては同じピアノなら、おなじ鍵盤をたたけば、同じ音がするはずだという人もいます。
個人的には、調律や、ペダルの使用の仕方で響きがかわるのだろうと思っていましたが、今回は、同じ調律なので、弾き方や、ペダルの使い方で、響きが変わるということのようです。
とにもかくにも、プレイエルの美しい響きを堪能できたコンサートでした。